快感を求めるあまり、性行為の仕方も多種多様になってきた現在において、性病に罹る人も増えています。性行為を経験する年齢が若年化していることで、発症件数も増えていると考えられています。
性病と一括りに言ってもその種類は様々あり、中には自覚症状が現れにくいものや、同じ種類であっても男性・女性によって症状の現れ方が異なるものもあります。また、種類によって病原体が異なるため、処置方法なども違ってきます。

性病は、放置していると病原体がどんどん体内へと侵入していき、さらに重症化したり、他の病気を引き起こす可能性があるため、早めに医師の診断を仰ぐ必要があります。また、大切なパートナーに移してしまう危険性も高いため、安易に考えてはいけません。
ここでは、性病の種類とその特徴、感染経路、男女別の症状などを学び、自身の性病に関する基礎知識として理解しておきましょう。

性病の種類

原虫や細菌など色々な性病の原因性病は感染症の一種で、あらゆる性行為(セックス・アナルセックス・オーラルセックス)によって感染します。病原体となるのは細菌やウイルスなどで、それらの病原菌が付着した精液や膣分泌物、唾液などが、パートナーの性器や口の粘膜などに接触することでうつります。

病原体が細菌やウイルス、原虫などであり、その数は非常に多いです。そのため性病も種類も非常に多く、日本性感染症学会がガイドラインにあげているものだけでも17種類あります。その中には梅毒・淋病・性器クラミジア・性器ヘルペス・尖圭コンジローマ・膣トリコモナスなどのほかに、HIV/エイズ・A型肝炎・B型肝炎・C型肝炎などもあります。これらの中で、性感染症の特定予防指針として示されているものが、性器クラミジア・性器ヘルペス・尖圭コンジローマ・梅毒・淋病・B型肝炎の6つです。

日本において患者数の多い性病としては、平成28年では1位が性器クラミジアで24,396人(男11,723人・女12,673人)、2位が性器ヘルペスで9,174人(男3,619人・女5,555人)、3位が淋病で8,298人(男6,654人・女1,644人)、4位が尖圭コンジローマで5730人(男3,662人・女2,068人)となっています。この数字は、厚生労働省が発表した報告数であり、感染していても自覚症状がなく報告されなかった人数も含めると、さらに多いと考えられます。

上位4つの性病の男女の数を比較すると、性器クラミジアや性器ヘルペスは女性の方が約1,000人~2,000人多いのに対し、淋病や尖圭コンジローマは男性の方が多くなっています。特に淋病においては、男性の方が約5,000人も多いことが分かります。報告数は少ないですが、女性に多いものとしては、膣トリコモナスがあります。

性病の原因

性病の主な原因は細菌・ウイルス・原虫であり、その原因ごとに分類することもできます。

細菌が病原体
淋病・梅毒・性器クラミジア・軟性下疳(なんせいげかん)など
ウイルスが病原体
尖圭コンジローマ・性器ヘルペス・HIV/エイズ・B型肝炎など
原虫が病原体
膣トリコモナス

病原体が異なるとその処置の仕方も変わってきます。例えば、ウイルスが原因の性病に細菌が原因の性病の処置方法を施したとしても、細菌のみに効果を発揮するため改善できません。性病の種類は違っていても、自覚症状は似ている場合もあります。このような場合は、慎重に見極めていかないと改善することはできない場合もあります。

症状がそれほど強くなく、我慢できる程度だからそのまま放置してしまうと、細菌やウイルスなどの病原体がどんどんと体の内部に侵入してしまいます。すると、今度は他の病気を発症する可能性も出てきます。また、何らかの性病に罹っているとHIVに感染する確率も高くなってしまうため、早めに対処する必要があります。

クラミジア症は最も感染者が多い性病

性病にかかった女性クラミジアは日本で最も感染者数が多く、その数は100万人以上に及ぶといわれています。近年では性交初体験の時期が低年齢化していることもあり、10代後半から20代前半の世代が非常に多くなっています。高校生に行った調査によると、性交経験者の中で女子の13.1%、男子の6.7%においてクラミジアが認められたという結果が報告されています。

どうしてこんなにも報告数が多いのかというと、クラミジアの自覚症状が関係しています。経路はあらゆる性行為であり、セックスはもちろんですが、アナルセックスやオーラルセックスでも粘膜同士が接触するためうつってしまいます。クラミジアの病原体は、クラミジアトラコマティスという細菌で、男性主には尿道へ、女性は子宮の入り口である子宮頸管にうつります。

クラミジアの症状

クラミジアの症状としては、男性は尿道からの膿や軽いかゆみ、軽度の排尿痛、精巣上体の腫れ、軽い発熱などが起こります。しかしながら、必ず違和感を感じるわけではなく、人によっては自覚がないこともあります。女性の場合は、おりものの増加、不正出血、下腹部の痛み、性交痛などがあります。ただし、全体の約半数で全く違和感を感じないといわれています。こうした理由から、クラミジアに罹っていても気付かなかったり、自覚があっても放置した状態で性行為をしてしまうことで、100万人以上に拡大していったと考えられます。

違和感に気付かなかったり、気付いても軽度だからとそのまま放置することは、自分にとってもパートナーにとってもマイナスなことしかありません。男性がクラミジアを放置すると、病原体が尿道から内部に侵入して前立腺炎や血性液症を引き起こす可能性があります。また、女性が放置した場合には、腹腔内にまで侵入して卵管炎や子宮外妊娠などの不妊の原因となる可能性があります。さらに、上腹部にまで達すると肝周囲炎を引き起こす危険性もあります。

男女共通である口腔内では、のどの腫れや痛み、発熱などがおこり、慢性扁桃炎を引き起こしやすくなります。口腔内は性器よりも自覚できない場合が高く、たとえ違和感を感じてもそれがクラミジアだと気付くにくく、風邪や扁桃炎などと間違えてしまうケースが多いです。女性の性器クラミジア患者のうち10%~20%の人は、咽頭からも検出されていたという結果も出ており、その病原菌の強さもうかがえます。

男性では50%の人が、また女性では80%の人が気付かないともいわれているクラミジアは、さらにHIVに感染する確率が、通常の人の3倍~5倍も高くなるとされています。これは、自覚がなくても病原菌が性器周辺に炎症を起こしている確率が高く、その状態でさらに性交渉をすることで炎症部分に傷がついてしまうことがあります。もし、パートナーがHIVを持っていた場合、性交渉によってその傷からHIVが侵入してしまう確率が高くなるからです。

淋病も感染者数が多い性病のひとつ

3番目に多く、特に男性がうつりやすい性病が淋病です。これは、男性が性風俗店を利用することが多く、そこでの性行為によってうつされてしまうケースがあるからです。風俗店では、特にオーラルセックスでうつされてしまう人が多いです。

淋病の病原菌は淋菌と呼ばれる細菌であり、この淋菌は非常に強力な細菌です。そのため、1回の性行為でも30%~50%の高確率でうつされてしまいます。オーラルセックスでは咽頭にもうつる可能性があります。淋菌の大きな特徴は、男性と女性では症状の現れ方が大きく異なることです。

男性の場合、淋菌が尿道の粘膜に付着して炎症を起こし、尿道炎(尿道から膿が出たり、かゆみや不快感、激しい排尿痛など)を起こします。さらに精巣上体が腫れたり、場合によっては発熱が起こることもあります。尿道炎においては、尿道から大量の膿が出ることが多く、色は白からクリーム色で粘り気を持っています。自覚できるため、違和感に気付きやすいです。

およそ3日~7日の潜伏期間を経て発症することが多く、性行為をしたことを忘れかけたころに発症するため、びっくりすることも多いです。しかし、違和感に気付きながらもそのままの放置してしまうと、淋菌がどんどんと体の内部に侵入していき、前立腺炎や血性液症、精巣上体炎などを引き起こすことがあります。精巣上体炎になる確率は低いですが、もし精巣上体炎を引き起こしてしまうと、陰嚢部分に激痛が走り、場合によっては無精子症(精液中に精子が全く存在しない病気)になってしまう可能性もあります。

自覚症状のない淋病を放置してしまうと

淋病を放置して寝込んでいる女性一方、女性の場合は多くの人に自覚がないといわれており、うつされたことに全く気付かないケースが多いです。そのため、知らないうちに淋菌が体内へと侵入してしまい、骨盤内で様々な症状を引き起こします。例えば、卵管炎を引き起こしたことで不妊症になってしまったり、骨盤髄膜炎になって40度近い高熱を出したり、下腹部の激痛、嘔吐、悪寒などを引き起こすこともあります。

将来、好きな人と結婚をして赤ちゃんが欲しいと思っても、過去に淋病に罹り正しい処置をしなかったことで、赤ちゃんができなくなってしまう可能性も十分にあります。また、たとえ妊娠できたとしても子宮外妊娠になる可能性もあります。このようなことになってしまうと、いくら後悔してもどうしようもありません。そうならないためにも、もしパートナーに淋病の疑いがあった場合には、たとえ自分に自覚がなくても医療機関で検査を受けることをおすすめします。

検査は、うつされた可能性がある日(性行為をした日)から2日~3日ほど経過していれば可能となります。従って、性行為をした場合にはその日をきちんと把握しておくことが大切です。これは不特定多数の人と性行為をした場合はもちろんですが、特定のパートナーがいる人でもうつされる可能性はあるため把握しておく方が良いです。

性器ヘルペスは主に性行為によって感染する性病

日本で2番目に多い性病が、性器ヘルペスです。性器ヘルペスは、クラミジアや淋病とは病原体の分類が異なり、単純ヘルペスウイルスによって引き起こされます。ウイルスには1型と2型があり、1型は上半身で発症する口唇ヘルペス、2型は下半身で発症する性器ヘルペスとなります。あらゆる性行為によってうつり、感染力も高いです。

クラミジアや淋菌は細菌であるため、正しい処置を行えば完治させることが可能です。しかし、性器ヘルペスがウイルスが原因であるため、一度でも感染してしまうと残念ながら完治させることは不可能となります。そのため、処置は発症を抑える方法のみとなります。

なぜ、ウイルスを死滅させることができないのかというと、ヘルペスウイルスは体内の粘膜に付着すると奥深くまで入り込んでしまい、神経節の中に潜伏してしまいます。神経節に入り込んでしまうと対処できないため、完治が困難になってしまうわけです。

性器ヘルペスには2つの発症の仕方があり、初めて発症した場合には初発型(または急性型)、再び発症した場合には再発型となります。初発型は性行為を行ってから2日~10日ほどで発症します。

男性のヘルペス

男性の場合は、患部の表面がヒリヒリしたり、むずがゆさを感じます。その後数日すると1mm~2mm程度の小さな水ぶくれやブツブツができてきます。それが大きくなり破れるとただれができて、激しい痛みが伴います。主な発症部分は、陰茎・亀頭が多く、場合によっては肛門周囲や直腸の粘膜、太ももなどにも起こります。初感染時よりも再発時の方が症状が軽く、短期間で回復する場合が多いです。

女性のヘルペス

女性の場合は、初発型では患部に水ぶくれやただれが起こり、激しい痛みが襲います。そのため、排尿するのも非常に困難な状態になり、場合によっては発熱を伴うことも少なくありません。発症部分は外陰や膣の入り口、肛門とその周囲が多く、太もものリンパ節が腫れることもあります。初感染時は非常に激しい痛みが起こりますが、再発の際は症状も軽く、短期間で回復することが多いです。

再発を繰り返すことが多い

男性・女性ともに、一度発症するとその8割以上が1年以内に再発するといわれています。再発型は、すでに体内にウイルスが潜伏している状態であり、普段は自身の抵抗力によってウイルスの活動を抑えているため、症状が出ていません。しかし、疲労やストレスが蓄積したり、何らかの病気に罹るなどして抵抗力が低下してしまうと、再びウイルスが活動を始めてしまいます。これによって性器ヘルペスが再発してしまうわけです。

再発時の症状としては、男性は初発型と同じ場所または、お尻や太ももなどに水ぶくれやただれが起こります。女性も初発型と同じ部分や、お尻、太ももなどに発症しますが、再発する前に膣の入り口部分に違和感を感じたり、太ももあたりにピリピリ・チクチクとした神経痛のような痛みなどの前兆が起こることもあります。